替えのきかないものを、十老頭は人に置き、幻影旅団は関係に置いた。同じ裏社会にいる2つの組織で、そこだけが正反対になっています。
分かりやすいのが、ヨークシンで両者が同じ暗殺一家に仕事を頼んでいることだ。ゾルディック家は十老頭からもクロロからも依頼を受けている。使える相手すら重なっているのに、組織としての作りは逆でした。
※ヨークシンシティ編(8〜13巻)の展開に触れます。
十老頭と幻影旅団は何をしている組織か
十老頭は、10地区のマフィアの頂点にいる10人の長老です。普段からひとつの組織として動いてはいない。年に一度ヨークシンに集まり、その期間だけ一緒に動く。
集まる目的が地下競売、いわゆる闇のオークションだ。世界最大規模の競売を、この10人が回しています。
幻影旅団のほうは13人組の盗賊団。0番の団長と、1から12番までの団員でできている。創設メンバーは流星街の出身で、そこで一緒に育った関係が土台になっています(→ 幻影旅団の団員ナンバー一覧)。旅団がこの競売品を狙ったことで、10人と13人が正面からぶつかりました。
十老頭と幻影旅団の作りを分ける3つの点
片方は10地区のマフィアの頂点、片方は13人の盗賊団。戦力を比べても意味がないので、順位はつけません。見るのは組織としての作りだ。
比べる点は3つ。
- 中核の人はどうやって集まっているか
- 欠けたときに何で埋めるか
- トップが欠けたらどうなるか
| 比べる点 | 十老頭 | 幻影旅団 |
|---|---|---|
| 中核の集まり方 | 各地区の頂点が年に一度そろう | 流星街の関係で13の席が埋まる |
| 欠けたときの埋め方 | 別の相手を新しく雇う | 空いた番号を継ぐ者を入れる |
| トップが欠けたら | 継ぐ者が描かれていない | 誰かが継げばいいとクロロが明言 |
差が出たのは中核の集まり方と、トップが欠けたあと。欠けた穴の埋め方は、意外にも似ています。
十老頭が動かせるのは、金でつながった人員だけ
十老頭が最初に出してきたのが陰獣です。10人組で、名前と能力が分かるのは5人。ウボォーギンとぶつかった4人は、そこで倒れた(→ 陰獣の念能力は殺すためではない)。
陰獣が全滅したあとも、やり方は変わらない。警察・傭兵・暗殺者と、旅団を潰すための人員を次々に金で集めていく。ゾルディック家への依頼もその一環でした。シルバとゼノが団長クロロを狙ってヨークシンへ来ます(→ ゾルディック家の念能力まとめ)。
足りなくなったら、次を買う。十老頭のやり方は、この繰り返しだ。
買える相手の質は高い。2人がかりの戦いは、シルバの一撃が決まる寸前まで進んでいます。決着こそつかなかったものの、金で届く範囲としてはほぼ上限に近い人選でした。
一方の旅団は、団員を金で集めていません。創設メンバーは流星街で育った仲間で、後から加わった者も報酬を積まれて来たわけではない。ヒソカは自分から入団を望んで席を取りにいった側だ。カルトも、報酬のためではなく自分の目的で旅団にいます。
ただし旅団も、外へ出す仕事には金を使う。金で人を集めない組織でありながら、金で人を雇う組織ではあります。
同じ一族が、十老頭とクロロの両方から依頼を受けている
その違いがいちばんはっきり出たのが、ゾルディック家の扱いだ。十老頭がゾルディック家へ旅団の始末を頼む。それと並行して、クロロもゾルディック家に十老頭の暗殺を頼んでいました。イルミたちが十老頭を殺したことで依頼主が消え、シルバとゼノの契約はそこで切れます(→ ゼノの念能力は”暗殺の効率”で読み解ける)。
同じ一族が、殺す側と殺される側の両方から仕事を受けている。しかもゾルディック家は約束を破っていません。依頼主が死んだから仕事が消えただけだ。
ここで見えるのは、金で結んだ関係は雇い主を選ばないということ。より高い金や、より早い依頼が来れば、同じ相手はそちらへ向く。十老頭は、その仕組みだけを頼りに組織を成り立たせていた。
旅団の中核はここが違う。団員は金で入っていないので、金で抜けることもない。外向きには金を使うが、内側は金でつながっていません。
穴の埋め方だけは、どちらも似た形をしています。十老頭は陰獣が退いたら次を雇い、旅団は団員が欠けたら番号を継ぐ者を入れる。違うのは速さと確実さくらいで、旅団には埋まった番号もあれば空いたままの番号もある。
クロロは「頭が死んでも誰かが継げばいい」と言っている
3つ目の点に、最大の差が出ました。
クロロは12巻で、旅団の仕組みを蜘蛛に例えて説明しています。自分が頭で、団員は手足。手足は頭の指令に忠実に動くのが大原則だ。
ただしそれは働きの話であって、生き死にの話ではない。頭が死んでも誰かが跡を継げばいい。場合によっては頭より足のほうが大事なときもある、と続けます。
団長という席そのものに、替えがきく作りになっている。旅団の掟でも、優先して生き残るべきなのは団長ではなく旅団のほうだ。
十老頭は正反対でした。雇う相手は金でいくらでも替えられるのに、10人の長老を継ぐ者は作中に出てこない。しかもその10人は、年に一度この街に集まっていた。10人が消えた時点で、雇われていたゼノとシルバは引き上げています。
替えのきかないものを、人に置くか、関係に置くか
3つの点を並べると、逆になっているのは1か所だ。十老頭は、替えのきかないものを人に置いた。だからその人が消えたとき、雇っていた側との縁も切れる。
ゼノとシルバが引き上げたのは裏切りではない。依頼主が消えれば仕事も消える。金で結んだ関係なら当然の結果です。
旅団は、替えのきかないものを関係のほうに置いています。席は継げるし、頭も継げる。残るのは流星街で結ばれたつながりで、これは外から買うことができない。ウボォーギンが死んでも旅団が動き続けたのは、その作りのおかげだ(→ ウボォーギンの念能力ビッグバンインパクト)。
俺はここに、冨樫が2つの組織を対にして描いた狙いがあると考えています。裏社会の強さを、財力や戦力ではなく「何で結ばれているか」で描き分けている。金で買った強さは、同じ金で裏返る。
十老頭が持っていたのは、確かに大きな力です。ただそれは、買い続けられる限りの力だった。
まとめ|十老頭と幻影旅団は、つながり方が逆だった
- 十老頭は年に一度そろう10人、旅団は流星街のつながりで13の席が埋まっている
- 欠けたときに替えを入れる形は、どちらの組織も同じ
- 十老頭とクロロは、双方がゾルディック家へ暗殺を頼んでいる
- クロロは頭が死んでも誰かが継げばいいと言っており、団長の席にも替えがある
- 替えのきかないものを、十老頭は10人の長老に、旅団は買えない関係に置いた
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