ジン=フリークスは父親失格か|ゴンに残した箱に置かれた条件

ジン=フリークスの評判は良くない。息子を親戚に預けて姿を消し、長いあいだ顔も見せなかった。ハンターとしては一流でも父親としては失格、という見方がファンの間で定着しています。

ただ、この評価は3つの言い分が重なってできている。1つずつ原作と照らすと、当たっているのは2つだけ。残る1つ、「父親としての役割を何ひとつ果たしていない」の部分が原作とずれます。ジンは渡していないのではなく、受け取れる者にしか開かない置き方をしていた。

ネタバレ注意。世界樹でゴンとジンが会う場面と、そのあとの暗黒大陸編の入り口まで踏み込みます。

「父親失格」という評価はどこで言われているか

この評価は、ジンを扱うまとめや人物解説で繰り返し書かれています。ハンターとしては一流だが父親としては失格、という言い方が多い。育児放棄という言葉が使われることもある。

十二支んの一員でありながら役目を投げ出す姿勢も、あわせて批判されます。組織の都合より自分の関心を優先する人物、という見方。

よく挙がる言い分は3つ。会いに来なかった、父親としての役割を何ひとつ果たしていない、身勝手に動き回っている。

通説1「ゴンを捨てて会いに来なかった」

ジンは12歳になる少し前にくじら島を出ました。第267期ハンター試験を唯一の合格者として抜け、そのまま島には戻らない。10年ほど経ったころ、まだ小さいゴンを抱えて一度だけ帰ってきます。

育てたのはミト。養育権もミトのもとへ移りました。裁判でジンから奪い取ったと、ミト自身が語っている。

ゴンが物心ついてから会いに来た描写はない。それどころかミトは、両親は事故で死んだとゴンに嘘をついていました。父親が生きていることすら、ゴンには伝わっていなかった。

だから「会いに来なかった」は当たっている。ただ「捨てた」まで言えるかは微妙です。ジンは赤ん坊を置き去りにしたのではなく、育てられる相手のところへ連れて帰っている。ミトが母親にあたるかどうかは、ゴンの母親は本当にミトさんなのか で検証しました。

通説2「父親としての役割を何ひとつ果たしていない」

ここが原作とずれます。ジンはくじら島に箱を1つ預けていました。天空闘技場編のあとに島へ戻ったゴンが、それを受け取る。

中身は3つ。ジンの声を録音したものと、ゲームのメモリーカード、そして指輪です。

箱を開けるには、ハンターライセンスと念の両方が要りました。ライセンスを取り、念を覚えた人間でなければ、そもそも中身にたどり着けない。

録音のほうにも仕掛けがあります。念がかけてあり、再生を途中で止めると自動で巻き戻って上書きされる。最後まで聞き通す気のない者には、何も残らない。

渡すものの手前に、条件が2段で置かれている。ゴンがハンター試験を受け、天空闘技場で念を身につけた。その順番を踏んで、ようやく箱が開きます。

何もしていないわけではない。受け取れる状態になるまで開かない渡し方を選んでいた。俺はそう読んでいます。

もっとも、これを父親として褒められるかは別の話。息子に会うための条件を、息子の側に課しているとも読めます。試験そのものの難しさは ハンター試験の全体像 にまとめてある。

通説3「役目を放り出して身勝手に動いている」

これもおおむね原作どおり。ジンは十二支んの会合にほとんど顔を出さず、自分の関心のあるほうへ動きます。会長選挙のあとには脱退届を出し、十二支んそのものから離れた。

面白いのは、この身勝手さが父親としての振る舞いと同じ性質だという点。ジンは相手に合わせて動かず、自分の位置を変えないまま、来られる者だけを迎える。世界樹のてっぺんで待っていたのも同じでした。ジンが暗黒大陸へ向かう理由そのものは ジンの目的 で掘り下げた。

探させる渡し方は、カイトがいて初めて働いた

3つの言い分をまとめて見ると、ジンの性質が1つに見えてきます。渡さない人物というより、探させる人物。箱の仕掛けも、世界樹で待つ姿勢も、同じ発想に見える。

ただ、この渡し方には足りないものがあります。探し始めるきっかけを、本人は用意していない。

ゴンが父を追いかけ始めたきっかけは、カイトでした。くじら島でキツネグマから助けられ、そこで父が生きていることを聞かされる。カイトはジンの弟子で、スラム街でハンターの生き方を教わった人物です。師の息子に、探す理由を渡したことになる。

念を教えたのもジンではない。ゴンとキルアに念を明かしたのはウイングで、天空闘技場での修行がそのまま入門になりました。

ジンが置いたのは条件だけで、届ける役は他人が担っている。カイトは逆で、目の前の相手に直接教える。2人がそろって初めてゴンは父にたどり着けた、と俺は考えています。この2人の渡し方の違いは カイトはジンの弟子 で4つの観点から並べました。カイトが自分の弱さをどう補っていたかは、カイトの念能力は弱いのか に詳しい。

まとめ

  • 「会いに来なかった」は原作どおり。ただし赤ん坊を置き去りにしたわけではなく、ミトのもとへ連れて帰っている
  • 「父親としての役割を何ひとつ果たしていない」は原作とずれる。箱はライセンスと念がそろって初めて開く仕組みだった
  • 「役目を放り出している」もおおむね一致し、父親としての振る舞いと同じ性質から来ている
  • ジンは探させて渡す人物として描かれ、答えのほうから相手に近づいてはこない
  • その渡し方が働いたのは、カイトが探す理由を渡し、ウイングが念を教えたから

カイトが人物として続いているのかどうかは カイトの転生は同じ人物なのか で基準を立てて比べています。ゴンがどんな能力に育ったかを知りたいなら、ゴンの念能力 も読んでみてほしい。

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