クラピカの復讐は、まだ終わっていない。理由は、彼が取り返そうとしているのが仇ではなくモノだから。緋の眼(ひのめ)は奪われて闇の市場に流れた品物で、旅団を全員倒しても手元には戻りません。
ヨークシンで旅団を追い詰め、団長を鎖で封じた。それでも物語は続き、今はカキンの船の上にいます。
冨樫はクラピカに、終われない目標を持たせた。俺はそう考えています。奪われた瞳がどこをどう渡り歩いたのか。その道筋に、狙いが表れています。
※ヨークシン編と、王位継承戦編(単行本既刊分)の展開に触れます。
緋の眼とは何か|感情が高ぶると緋色に輝く瞳
緋の眼はクルタ族の体質。感情が高ぶると、瞳が緋色に輝きます。
この色は世界七大美色の一つに数えられるほど美しいとされ、人体収集家の間では法外な値段がつく。標的にされた理由は、それだけ。彼らが何かをしたわけではありません。
もう一つ、無視できない性質があります。緋色になった状態で死ぬと、その色は遺体が腐敗するまで残る。持ち主が死んだあとも、瞳は品物として残り続けます。
緋の眼がハンターハンターの物語を動かした4つの場面
緋の眼は、物語の節目で何度も出てくる。主なものは4つ。
クルタ族が滅ぼされた場面
クルタ族は森の奥に隠れ住み、外の世界との接触を掟で厳しく制限していました。それでも試験に通れば外へ出られる。
クラピカが外出試験に合格して村を出た6週間後、幻影旅団がクルタ族を襲った。生き残ったのはクラピカだけ。旅団の目当ては瞳そのもので、遺体から緋の眼がくり抜かれています。
ここで起きたのは、殺害だけではない。奪われた瞳が、そのまま闇の市場へ流れていった。
ヨークシンのオークションに並んだ場面
クラピカがマフィアのノストラード組に入ったのも、緋の眼のためです。組長の娘ネオンは珍しい人体を集める収集家で、緋の眼にも関心を示していた。
収集家なら、同じ趣味の相手にコレクションを見せたがる。その護衛につけば目に近づける。クラピカはそう読んだ。
そしてヨークシンシティのオークションに、緋の眼が競売品として並びます。クラピカは29億ジェニーで競り落とした。ところが、それは偽物。仇を追う話のはずが、いつのまにか値付けと落札の話になっています。
ウボォーギン戦で緋の眼が能力を切り替えた場面
ヨークシン編で、クラピカはウボォーギンを単独で倒します。このとき緋の眼は、能力のスイッチとして働いた。
瞳が緋色になると、クラピカは具現化系から特質系に変わる。そこで絶対時間(エンペラータイム)が使えるようになります。一族の証が、そのまま戦う力になっている。鎖の能力全体の作りはクラピカの念能力で整理しました。
王位継承戦でツェリードニヒに行き着いた場面
暗黒大陸編に入るころ、クラピカは収集家の手にあった緋の眼をあらかた回収し終えます。残る所持者として名前が挙がったのが、カキン帝国の第4王子ツェリードニヒ。
この情報と引き換えに、クラピカは十二支んへ加わった。そして任務として、継承戦の船に乗り込みます。ツェリードニヒに近づくために応募した護衛任務で、割り当てられたのは第14王子ワブル。狙った相手とは別の王子を守る立場から、継承戦が始まっています。
緋の眼は手から手へ渡り続けている
4つの場面を通して見ると、緋の眼はずっと移動している。クルタ族の顔から旅団の手へ、旅団から闇の市場へ。市場から収集家へ、収集家から王子へ。
起きているのは、遺品の紛失ではありません。値段がつき、売買され、所有者が入れ替わっていく。緋の眼は物語の中で、一貫して商品として扱われている。
しかも買う側は、襲撃と無関係です。ネオンもツェリードニヒも、クルタ族を殺してはいない。奪った者と持っている者が別なので、奪った側を倒しても回収は進みません。
緋の眼は復讐の的として“モノ”に置かれた
これだけ持ち主が入れ替わる設定は、話の都合で後から足したものには見えない。最初から仕込まれた組み立てだと俺は考えています。
復讐の的が人なら、話は仇を倒した時点で終わる。ところがクラピカの目標は2つあります。旅団の壊滅と、緋の眼の奪還。前者は倒せば減っていくものの、後者は世界中に散らばったままです。
作中では現存36対とされ、数だけは分かっている。ただし、その1対ずつがどこにあるのかは追ってみるまで分かりません。
普通、主人公の目標は達成できる形で用意される。クラピカの場合は逆で、片方が終わってももう片方が残るように組まれている。ヨークシン編で旅団と決着がついても話が終わらなかったのは、この二重構造があったからだと読めます。
ゴンの復讐と比べると、終わり方の違いが出る
同じ作品の別の復讐と比べると、この見方は確かめやすい。並べる相手はゴンとネフェルピトー。
ゴンが最初に求めたのは、ピトーにカイトを治させることでした。カイトの死を突きつけられてからは、目的が抹殺に変わる。中身は変わっても、向き合う相手は最初から最後までピトー1体だけ。
だからピトーを倒した時点で、ゴンの復讐は終わっている。代償はあまりに大きかったものの、話としては閉じました。
クラピカにその瞬間は来ません。ウボォーギンを倒しても、団長を鎖で縛っても、目は1つも戻ってこない。復讐の的をモノにするとどうなるか。ゴンとの違いにそのまま出ています。
クラピカ自身の変化も根拠になる。ヨークシン編の彼は、旅団への怒りで動いていた。継承戦編では、狙いと関係のない王子の護衛まで引き受けている。行動が復讐というより、回収作業に見えてきます。
苦しんだ最期ほど高値がつく仕組み
緋の眼の設定で残酷なのは、緋色のまま死ねば色が残るという条件だと俺は考えています。
瞳が緋色になるのは、感情が高ぶったとき。襲われて殺される瞬間ほど、感情は激しく動きます。つまりクルタ族は、恐怖と怒りの極みにいたからこそ瞳が緋色になった。そしてその色のまま絶命したことで、高く売れる品物になっています。
穏やかな最期なら、瞳は普段の色のままだったはず。苦しんだ分だけ値段が上がる。この条件が、緋の眼をただ美しい瞳とは違うものにしている。
だから緋の眼は、クラピカを動かし続ける動機であると同時に、彼を縛るものでもある。回収の過程で戦うたびに、絶対時間を使うことになるからです。奪われた瞳を追う行為が、そのまま自分の寿命を削っていく(→クラピカの寿命)。
終われない目標を用意し、その目標を追うほど本人が消耗する。冨樫は緋の眼を、そういう仕掛けとして組み立てた。俺はそう見ています。
まとめ|緋の眼はクラピカの復讐を終わらせない
- 緋の眼はクルタ族の体質で、感情が高ぶると緋色に輝く。世界七大美色の一つに数えられ、法外な値段がつく
- 緋色のまま死ぬと色が遺体に残るため、持ち主の死後も商品として市場に流通する
- クルタ族の顔から旅団、闇の市場、収集家、そして王子へ。緋の眼は一貫して手から手へ渡っている
- 奪った者と持っている者が別なので、仇を倒しても回収は進まない。クラピカの復讐が終わらない理由はここにある
- ゴンの復讐が相手1体を倒して閉じたのに対し、クラピカの目標は閉じない形に組まれていると読める
戦闘で緋の眼がどう働くのかはクラピカの念能力にまとめました。目を追い続けた代償はクラピカの寿命で数えています。残る所持者ツェリードニヒの厄介さについてはツェリードニヒの念能力へ。


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