念能力の代償といえば、命や寿命や体の一部が思い浮かびます。ネオン=ノストラードの天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)は、そのどれも取らない。
代わりに引かれているのは、この能力からネオン自身が受け取れるはずだったぶんです。自分は占えず、書いた中身も残らず、出来上がった詩も読まない。
他人にとっては破格に効く力が、持ち主にだけ何も返していない。その釣り合いを見ていきます。
※ヨークシン編・グリードアイランド編に触れます(クラピカの能力の代償で王位継承戦編の設定にも軽く触れます)。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
天使の自動筆記が受け取るものと、差し出すもの
この能力は、受け取る側と差し出す側がはっきり分かれている。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 得るもの | 依頼者の先を示す詩。四行詩が4〜5編で、合わせて1か月ぶん |
| 発動の条件(払うのは依頼者) | 相手の直筆と、本人か写真がその場にあること |
| 差し出すもの① | 書いているあいだ、ネオン本人には中身が残らない |
| 差し出すもの② | ネオン自身は自分を占えない |
| 本人の決め事 | 出来上がった詩を、ネオンは読まない |
条件と差し出すものを分けたのには理由があります。条件のぶんを払っているのは、ネオン本人ではありません。
詩が組にもたらしたもの
得る側から見ると、この能力は桁外れだ。
ノストラード組は、ネオンの占いを売り込んで急速に大きくなりました。マフィアの顧客を多数抱えるまでになった。占いの代金が、そのまま組の財源になっている(→ ノストラード組は念能力1つで回っていた)。
詩の中身も具体的だ。危険を告げるだけでなく、避け方の助言まで書かれている。悪い内容の詩には必ず警告が添えられ、その警告を守れば避けられるとされる(→ 天使の自動筆記は的中率100%?)。
受け取った側は、詩を読んでそのまま動ける。そこまでの精度がある力です。
ネオンの占いの条件をそろえるのは、占ってもらう側
発動には条件があります。占う相手の直筆で、名前・生年月日・血液型が書かれたもの。加えて、相手本人か写真がその場にあること。
縛りが重いほど力は上がる、というのが念の基本です(→ 制約と誓約は“念の交換レート”)。この能力の縛りも軽くない。
ただし、その縛りを満たすのは占ってもらう側です。書いてほしい人間が、自分の情報を持って並ぶ。ネオンが手を動かす前の準備は、すべて依頼する側で終わっている。
払っているのが能力の持ち主ではない。ここがまず、他の念能力と違う点です。
書いている本人には、中身が残らない
ここから先が、ネオンの払っているぶんになります。
詩を書いているあいだ、本人に中身は分からないとされる。手が勝手に動いて詩が書き上がり、書いた記憶も残らない。
そしてネオン自身は、自分を占えないとされています。未来を示す力を持ちながら、その力が向く先に本人だけが入っていない。
書き手でありながら、読み手ではない。この能力は、持ち主を最初から外している。
出来上がった詩を読むのは、いつも他人
3つ目は能力の制約ではなく、本人の決め事です。ネオンは出来上がった詩を読まないようにしている。自分が関わらないほうが当たる気がする、というジンクスからでした。
結果として、詩を読むのはいつも他人になる。クロロが自分に出た詩を読んで涙を流す場面もある。そのとき、書いた本人は中身を知りません。
書いたのはネオン、読んで受け取ったのはクロロ。同じ1編の詩で、差し出した側と受け取った側が完全に分かれています。
的中率をめぐる議論が起きるのも、読み手の側だ。ネオンはその外側にいます。
差し出していたのは、ネオン自身の取り分
作中で描かれる念能力の多くは、持ち主自身が最初の受け手になる。クラピカは寿命を削って出力を上げている。破れば自分が死ぬ条件も、自分に課している(→ クラピカの念能力は“二段構え”)。重い代償を払っても、その力を使うのは本人です。
ネオンの場合、払ったぶんの行き先が違う。差し出したのは、この能力から自分が受け取れるはずだったぶんそのものだ。
だから強さの評価も、誰から見るかで裏返ります。他人にとっては代金を払ってでも欲しい力で、本人にとっては1度も役に立っていない。念能力の中でも、かなり珍しい形だと俺は思います。
グリードアイランド編では、能力を使えなくなったネオンの姿が描かれる。そのあと本人がどうなったかは、原作に出てきません。代わりに傾いたのは、詩を受け取っていた組の側でした(→ 念能力を奪う・借りる・与える)。払っていた側は、能力を失っても減るものがなかったことになる。
まとめ|天使の自動筆記が差し出しているもの
- 得られるのは、四行詩4〜5編でおよそ1か月ぶんの先を示す詩。避け方の助言まで書かれている
- 発動の条件(相手の直筆と、本人か写真)を満たすのは、占ってもらう側
- 書いているあいだ本人に中身は残らないとされ、自分自身を占うこともできないとされる
- 出来上がった詩を読まないのは能力の制約ではなく、自分が関わらないほうが当たる気がするという本人のジンクス
- 差し出されているのは命でも寿命でもなく、この能力からネオンが受け取れるはずだったぶん
他人には最大限に効いて、持ち主にだけ何も返らない。天使の自動筆記は、そこまで偏った釣り合いの能力です。命や寿命を削る代償とは、払い方そのものが違う。
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