腕を失う場面は、ハンターハンターに何度も出てきます。ヒソカ、ゴン、ネテロ、カイト、メルエム、シュート。主要な人物だけで6人。
そのうち腕が体に戻ったのは3人だ。ただし戻した手は、1人ぶんも自分のものではありませんでした。
自分の念で腕をどうにかした人物もいる。やったのは、代わりを作るほうだった。
※天空闘技場編・ヨークシン編・グリードアイランド編・キメラアント編・暗黒大陸編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ネテロの腕は、失ったまま最後まで戻らない
メルエムとの戦いで、ネテロは右足を切られ、続いて左腕をもぎ取られました。腕と足を失った状態のまま、最後の一撃まで戦い抜いている。
戻す相手はいなかった。代わりの手も作らなかった。
腕を失った人物の中で、ここまで何も足さずに終わるのはネテロだけです。だから、比べるときの基準になる。ほかの5人は、ネテロがしなかったことのどれかをしている。
腕が戻った人物は、全員が他人の手を借りている
失ったあとに何が起きたかで仕分けると、4つに分かれます。
| 戻り方 | 動かした側 | 代表例 |
|---|---|---|
| 他人の念でつなぐ | 他人 | ヒソカ |
| 他人の力で治す | 他人 | ゴン |
| 自分の念で代わりを作る | 自分 | ヒソカ |
| 戻らない | — | ネテロ |
体が元どおりになっているのは上の2つだけ。どちらも動かしたのは他人の側です。
3つ目は性質が違う。腕そのものは戻っていないのに、外から見ると戻ったように見える。
ヒソカは、腕を縫ってもらった側と、腕があるように見せた側の両方をやっています。
他人の念でつなぐ|ヒソカの腕を縫ったのはマチ
天空闘技場でカストロと戦ったとき、ヒソカは腕を切られています。資料の多くは両腕とする。
試合が終わったあと、切れた腕をつないだのはマチでした。念糸縫合。糸で組織を縫い合わせる技であって、傷そのものを治す能力ではない。くっつくまで無理をするなと言い添えているのも、治療ではない証拠になります(→ マチの念能力“念糸縫合”は治療ではない)。
つないだのは他人の手。治るのを待つのは本人の体。この2つが分かれているのが、この形の特徴だ。
他人の力で治す|ゴンの腕はカードとナニカで戻っている
ゴンは腕を2回失っています。どちらも戻ったが、戻した力は別物だった。
1回目はグリードアイランドのゲンスルー戦です(→ ゲンスルーの念能力は手の内を全部明かす)。爆破で腕を失い、そのあと「大天使の息吹」というカードで治りました。SSランクのカードで、どんな重傷や病気でも治すとされている。
グリードアイランドは念能力者が作ったゲームだ。カードを用意したのもゲームの側です。
2回目はネフェルピトー戦のあと。全身が干からびたような状態になったゴンを元に戻したのはナニカでした(→ ナニカ(アルカ)のおねだりのルール)。ナニカの力が念なのかどうかは、作中で確定していない。
体は戻り、そこでゴンは念が使えなくなった。2回とも、戻した側にゴン本人はいません。
自分の念でできるのは、見た目を戻すところまで
戻っている腕は、どれも他人の手によるものだ。では自分の念では何もできないのか。
ヒソカはできています。やってみせたのは、代わりを作るほうだ。
カストロ戦の最中、ヒソカは切られた腕がつながっているように見せました。使ったのはバンジーガムと薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)。実際にはつながっていないので、切られた腕のほうはバンジーガムで投げつけ、決め手に使っている。
クロロとの戦いのあとにも同じことをした。蘇生したヒソカは、失った手足を自分のオーラで形にしています。その上を薄っぺらな嘘で覆い、皮膚の見た目まで再現していた。
どちらも、腕が戻ったわけではない。腕があるように見える状態を、自分で作っている。
薄っぺらな嘘は、もともと質感まで似せられる能力だ。自分の欠損に向けると、治療ではなく偽装として働きます(→ ヒソカの念能力は、なぜ“安く強い”のか)。
自分の念で届くのはここまで。その境目が、ヒソカ1人の中ではっきり出ています。
シュートは、戻さないまま自分の念で手を持っている
4つに仕分けたとき、どれにも収まりきらない人物がいます。シュート=マクマホンだ。
シュートの左腕は、肩から先ごとありません。長い左袖の中に、籠と3つの浮遊する手を隠し持っている。失った理由は原作で説明されていない。
袖に隠しているのは能力のほうです。腕が無いことを隠すための袖ではない。戦いでは袖から出して使い、浮かぶ手の上に立って動いています(→ シュートの念能力を“臆病さ”から読む)。
ヒソカの代用は、腕があるように見せるためのものでした。シュートの手は、無いまま別の手を持つという選び方だ。
戻らない側に数えると、ネテロと同じ場所に入ります。それでもシュートだけが、無い腕の代わりを自分の念で用意している。
メルエムは2回失って、失い方も戻り方も違う
もう1人、仕分けに収まりにくいのがメルエムです。1人で2回腕を失い、2回とも形が違う。
1回目は自分で引きちぎった。コムギとの軍儀で覚悟の差を認め、賭けを取り下げ、その詫びとして自分の左腕をもぎ取っています(→ コムギはメルエムと何が違ったか)。
失わせたのが他人ではなく本人だ。この形はメルエム1人だけです。治したのはネフェルピトーの玩具修理者(ドクターブライス)で、戻した側は他人のまま。
2回目は貧者の薔薇。爆発で両手両足を失い、そのあとプフとユピーが自分たちの肉体を捧げて復活させました(→ ユピーの念能力は戦いながら進化する)。
このときは、念で治したというより体そのものを渡した形になっている。4つの仕分けはどれも「誰の手が入ったか」で分けています。この例だけは、渡されたのが念なのか体なのかが決まらない。
2回とも、戻したのはメルエム自身ではありませんでした。
カイトの体はつながれたが、本人には返らなかった
戻らなかった側にも、そのまま数えにくい例がある。
カイトはネフェルピトーに右腕を切られ、そのまま殺されました。ただし体はそこで終わっていません。ピトーは玩具修理者でカイトの体を継ぎ接ぎに修復し、操り人形のような状態にしている(→ ネフェルピトーの念能力に“攻撃技”は一つもない)。
体は一度つながれた。返らなかったのは、カイト本人のほうだ。
のちに、記憶と人格を引き継いだカイトがキメラアントの子として戻ってきます。人間カイトがそのまま戻ったわけではありません(→ カイトの転生は同じ人物なのか)。腕が戻った例には数えられない道筋だ。
腕が戻るかどうかを決めているのは、本人ではない
4つに仕分けてみると、同じ形が何度も出てきます。
肉としてつながった腕には、例外なく他人の手が入っている。マチの糸、ゲームが用意したカード、ナニカ、ピトー、護衛軍の体。持ち主がどれだけ強くても、切り落とされた自分の腕を自分で戻した人物は1人もいません。
自分の念でできるのは代わりを作るところまでだ。ヒソカはそれを2回やっていて、2回とも見た目の再現で止まっている。
念が自分の傷に効かないわけではありません。クラピカはウボォーギン戦で粉砕された左腕を、自分の鎖で即座に治しています(→ ハンターハンターに回復役が少ないわけ)。効かないのは、切り落とされて無くなった腕のほうだ。失った腕を戻す力は、いつも別の誰かの側にある。
だから腕を失う場面は、痛みの描写というより関係の描写になっているのだと俺は読んでいます。誰が助けに来るか、来ないか。ゴンにはナニカがいて、ヒソカにはマチがいて、メルエムには護衛軍がいた。ネテロとカイトには、その相手がいなかった。
まとめ|ハンターハンターで腕を失った人物と、その戻り方
- 腕を失った場面は4つに分かれる。他人の念でつなぐ/他人の力で治す/自分の念で代わりを作る/戻らない
- 肉としてつながった例には、例外なく他人の手が入っている。マチの念糸縫合、大天使の息吹、ナニカ、ピトーの玩具修理者、護衛軍の肉体
- 自分の念でできたのは見た目の再現まで。ヒソカは2回それをやっているが、どちらも腕そのものは戻っていない
- シュートは戻すことも見せかけることも選ばず、浮遊する手を持つほうへ進んだ。メルエムは自分で腕を落とした唯一の例
- ネテロは何も足さずに終わり、カイトは体をつながれても本人は返らなかった
腕が戻るかどうかを決めているのは、失った本人ではありません。決めているのは、そこに誰がいたか。
戻さないという答えを自分で持っているのは、シュート1人だけです。
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