ハンターハンターの遺体と墓|引き取ったのは身内ではなかった

花を持って墓の前に立つ執事が2人。手を合わせている相手は、少し前まで同じ屋敷で働いていた男です。

ハンターハンターで墓が立ち、身内が弔う場面は、原作で描かれたかぎりここだけ。ほかの死者は、遺体が敵の手に渡ったまま話が先へ進みます。

※ヨークシン編・キメラアント編・会長選挙編・暗黒大陸編に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。

ハンターハンターの遺体は、3通りの行き先しか描かれていない

遺体のその後まで原作に出てくる人物を集めてみる。行き先は3つに割れます。

遺体の行き先 体を扱ったのは誰か 代表する人物
埋められる 戦って倒した側 ウボォーギン
持ち去られて手元に置かれる 殺した側 カイト
残らない 食べた側 ポックル

3つとも、体を動かしたのは遺族でも仲間でもない。倒した相手のほうが、行き先を決めている。

埋められたウボォーギンには、墓標も墓参りも描かれない。土をかけて終わりです(10巻 No.84)。埋葬したのがクラピカだった、という読み方はファンの解説や読者の回答に見られる。ただし、誰が掘ったのかを描いた場面は原作で見つからない。

カイトの場合は、首だけが切り離されて相手の手元に残った。19巻 No.199 の最後に、ピトーの膝の上へ乗せられた首が描かれます。体のほうは玩具修理者(ドクターブライス)で継ぎ接ぎに直され、別の念能力で動く人形に変えられた(→ ネフェルピトーの念能力に”攻撃技”は一つもない)。弔うためではなく、使うために持ち去られた形だ。

同じ扱われ方は、ヨークシンから離れた場面にも出てきます。34巻 No.357 で、シャルナークの遺体はブランコに座らされた状態で見つかった。その足元にはコルトピの首が落ちています。置き方まで決めたのは殺した側で、首は体から離されたままだ。

3つ目は、体そのものが残らない型。ポックルは脳をいじられたあと女王の餌にされ(19巻 No.198)、ポンズも蟻に食べられました。キメラアントにとって人間は食料なので、遺体という言い方すら当てはまらない(→ キメラアントの女王は餌を5倍にして王を作った)。

遺体の一部だけを奪われたクルタ族

体まるごとではなく、一部だけが持ち去られた例もあります。

クルタ族は襲われたあと、遺体から緋の眼を1つ残らずくり抜かれた。奪われた眼はそのまま市場へ流れ、買い手を変えながら今も動いている(→ 緋の眼はなぜ市場を渡り歩くのか)。クラピカが同胞を弔った場面は、俺が原作を追ったかぎり見つかりません。

クラピカを残して一族は滅びており、村に遺体を引き取る者はいませんでした。それでも眼のほうは、持ち去った側の都合で動き続けています。

死んだかどうかの判定そのものが割れる人物も多く、そちらは別に整理しました(→ ハンターハンターの死亡キャラは3種類)。ここで見ているのは、死が確定したうえで体がどこへ行ったか、という一点だ。

そう見ると、はっきり外れる場面が2つあります。

ゴトーの墓だけが身内の手に戻っている

ゴトーはゾルディック家の執事長で、31巻 No.327 でヒソカに首を切られて死にました。

そのあと、32巻 No.339「静寂」に墓が出てくる。カナリアとアマネが花を供えて手を合わせる場面だ。同じ屋敷の人間が、墓の前で弔っている。ここまで描かれた死者は、ほかに見当たりません。

ところが、ここには続きがある。

墓の前に立つ2人のところへ、ゴトーの姿をした人物が現れます。中身はキリコで、人に化ける変幻魔獣が姿だけをなぞったものだ(→ ハンターハンターの変装・なりすまし)。しかも2人は、ゴトーが死んだことをキルアに伏せています。

体は身内の手に戻った。それでも屋敷の外へ出ていく「ゴトー」は、別の存在が引き受けている。死んだという事実も、当人の主には届いていない。戻ってきたのは体だけだ。

執事という立場が家の中でどう扱い分けられていたかは、別に書いた(→ ゾルディック家の執事で一番自由に動いたのはカナリア)。能力の評価がどこでずれたのかも、また別にまとめている(→ ゴトーの念能力はヒソカに避けさせている)。

死ぬ前に体を渡したプフとユピー

もう1つ、順番が逆になっている場面があります。死んでから扱われたのではない。死ぬ前に、自分で渡している。

貧者の薔薇の毒で瀕死になったメルエムを戻すため、プフは自分の体を差し出しました(28巻 No.299「再生」)。献上したのは体の6/7とされ、渡したあとは元の姿より小さくなっています。それでもプフは、その姿のまま王のために動いた。息絶えるのは東ゴルトーの民衆の中で、王のそばではありません。

ユピーも同じように、自分の体を液状にして王の口へ運びました。渡したぶんだけ小さくなった点も変わらない。

違うのは、その後の描かれ方でした。ユピーが息を引き取る場面は原作に出てこない。死んだあとにプフがたまたま見つけただけです。護衛軍で正面から殴り合っていた個体が、死ぬところだけ描かれずに終わります。

護衛軍3体が王の何を補っていたかは、役目の分担として読み解けます(→ 護衛軍3体はメルエムの何を補ったのか)。探知も人心も迎撃も渡し終えたあとで、残っていたのが体だった。

そして、どちらの遺体も誰にも引き取られていない。先に渡したぶんだけが、自分の意思で行き先の決まった部分だった。

遺体が動かしているのは、残された側のほう

最初の3通りに戻ると、遺体の置かれ方には向きが見えてきます。

ハンターハンターの死は、弔いで閉じない。カイトの首は追う側の目的に変わり、緋の眼は商品として動き続けた。ウボォーギンの死は、旅団が鎖を使う相手を追う理由になりました。遺体の多くは、残された誰かを次へ動かすきっかけとして置かれている。

ゴトーの墓だけが、その向きに逆らう。手を合わせる場面で話は前に進まず、代わりに現れたのが化けた魔獣だった。唯一の弔いが、本人の不在を確かめる場になっています。

念が絡む死なら、体が残っていても別の扱いになります(→ 死後の念はなぜ消えない?)。カイトのように、違う個体として戻ってくる例もある(→ カイトの転生は同じ人物なのか)。それでも体そのものは、置き去りにされたままだ。

冨樫が遺体に与えた役割は、悼まれることではない。持ち主が死んだ体は、そこから先の話を動かす材料のほうへ回されています。

まとめ|ハンターハンターで遺体はどう扱われたか

  • 遺体のその後まで描かれた場面は、埋められる・持ち去られて手元に置かれる・残らない、という3通りに割れる
  • 3つとも体を扱ったのは殺した側で、遺族や仲間が引き取った場面はほとんど出てこない
  • クルタ族は体ではなく緋の眼だけを奪われ、その眼は今も持ち主を変えながら動いている
  • 墓が立ち、身内が手を合わせた場面はゴトーの1件だけ。それでも死はキルアに伏せられ、墓の前に現れたのは化けたキリコだった
  • プフとユピーは死ぬ前に体の大部分を王へ渡し、残った体は誰にも引き取られていない
  • 遺体は悼まれる対象ではなく、残された側を次へ動かす材料として置かれている。これが俺の読みだ

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