モレナが念を感染させられる人数には、23人という上限があります。
きりの悪い数字だ。ただ、同時に何人へ効くかを能力ごとに見ていくと、人数にはたいてい上限か引き換えが置かれています。多いほど得、という形になっていない。
クラピカの1人から、プフの無数まで。届く数が増えるにつれて、術者が何を手放しているのかを追いかけます。
※ヨークシン編・グリードアイランド編・天空闘技場編・キメラアント編・王位継承戦編の展開に触れます。
念能力が1人ずつしか届かないとき、その1人にかかる重さ
まずはいちばん少ない側から。クラピカの鎖は、作中でいつも1人ずつを相手にしています。
束縛する中指の鎖は、巻きついた相手を強制的に絶にする。相手の強さは関係なく効きますが、そのぶん代償が重い。鎖の力を幻影旅団以外へ使えば自分が死ぬ、という誓約を背負っています(→ クラピカの念能力は”二段構え”)。
ナックルの天上不知唯我独損(ハコワレ)も、描かれているのは1人を相手にする場面だ。殴って自分のオーラを貸し付け、利息が積み上がって上限を超えたところで、相手の念が1か月止まる。
取れる結果は大きい。格上でも絶に落とせるし、念を1か月封じられる。そのかわり、どちらも1人ずつにしか効いていません。他の相手に回せたはずの攻撃回数を、そこに全部使っている。
ハコワレのほうは、貸し借りの収支で読むと分かりやすい(→ ナックルの念能力ハコワレを”借金の収支”で読む)。
ブラックボイスの人数は、アンテナの本数で決まる
次はシャルナーク。携帯する他人の運命(ブラックボイス)は、アンテナを刺した相手を操る能力です。
アンテナは2本。だから同時に操れるのは2人までとされています。上限が道具の数でそのまま決まっている。
代わりに手に入れているものははっきりしている。刺さりさえすれば、相手の強さは関係ない。屈強な戦士でも一瞬で操られます(→ シャルナークの念能力ブラックボイス)。
操作系は、相手の抵抗しだいで発動までの手順が重くなるように見えます(→ 操作系が弱いと言われるのは威力のせいではない)。ブラックボイスはそこを「刺す」の一動作にまとめている。2人までという上限が、その手軽さの代償です。
同じアンテナを自分に刺す自動操作モードもあります。オーラが跳ね上がり、本人が自分で戦えるようになる。ここで支払っているのは人数ではなく、本人の反動のほう。自我を保てなくなり、解除後は激しい筋肉痛に襲われます。
モレナの23人は、上限を外側へ渡している
人数が一気に増えるのがモレナです。恋のエチュード(サイキンオセン)は、キス1つで他人に念を感染させる能力。
ここにも上限があります。感染させられるのは、自分を含めて23人まで。術者から直接広げられる範囲は、はっきり決まっている。
その先の作りが変わっている。発症者は人を殺すたびにレベルが上がり、100に達すると今度は自分が新たな感染源になる。23人という上限は、外側へ渡されて消えます。
そのかわり、モレナは1人ずつに命令を出していません。キス1つで、あとは本人が勝手に殺して伸びていく。レベルやポイントは把握できても、誰をどう動かすかまでは決められない(→ モレナの念能力”恋のエチュード”が念使いを増やす仕組み)。
1人あたりの重さと、届く人数。ここでもはっきり逆を向いています。
プフは分かれるほど1体が弱くなる
蝿の王(ベルゼブブ)は、自分の体を細胞のレベルまで分けて無数の蠅になる能力。弱くなることと数が増えることが、能力の説明の中でひと組になっています。
小さく分かれるほど一つひとつは弱くなる代わりに、数を増やせる。弱さと届く広さが、同じ1つの性質から出ている。
もう1つの鱗粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)も同じ向き。撒いた鱗粉で相手のオーラを読み、暗示をかけられる。ただし相手を倒す力はない。東ゴルトーで民衆に暗示をかけたのは、この鱗粉のほうです(→ プフの念能力を護衛軍3体で比較)。
1人ずつ相手にする能力では、そもそも届かない規模だ。
同時に効く人数と、代わりに手放しているもの
5つの能力を、届く数が少ない順に並べます。
| 誰の能力 | 作中で同時に相手にした数 | 代わりに手放しているもの | 手に入れているもの |
|---|---|---|---|
| クラピカの鎖 | 1人 | 旅団以外に使えば死ぬ誓約 | 相手を選ばず絶に落とせる |
| ナックルのハコワレ | 1人 | 殴って貸し付ける時間 | 念を1か月止められる |
| シャルナークのブラックボイス | 2人 | アンテナの本数で決まる上限 | 地力の差を飛ばせる確実さ |
| モレナの恋のエチュード | 23人 | 1人ずつへ命令を出す手段 | 外側へ広がり続ける網 |
| プフの蝿の王 | 無数の蠅 | 1体ずつの強さ | 同時に多くの場所へ届く |
プフだけは、増えるのが相手の人数ではなく自分の分身の数。それでも払っているものの形は変わらない。
上から下へ、数は増えていきます。それと入れ替わりに、1つあたりに置ける重さが軽くなっていく。クラピカは1人を確実に止める代わりに、命を担保に入れている。プフは無数に届く代わりに、1体では何もできない。
集団を操る型ほど、上限がはっきり書き込まれている
念能力全体を見ると、人数と決め手を両方持つ例はあります。ゲンスルーの爆弾は、条件を満たせば同時にいくつも仕掛けられる。そのまま複数人を倒し切った(→ ゲンスルーの念能力は手の内を全部明かす)。
クロロも、コルトピの作った大量の人形を人間の証明(オーダースタンプ)で操っていた。そして、その人形の特攻で決着をつけました。
どちらも他人を直接操って人数を増やす形ではありません。あらかじめ条件を配る形か、複数の能力を組み合わせる形。この2つなら、人数の制限を避けられているように見えます。
逆に、他人を直接操る型ほど上限がきっちり書き込まれている。俺は、そこが冨樫の線引きだと考えています。人を1人ずつ動かす力は、まとめて配れないようにしてある。
シャルナークのアンテナ2本も、モレナの23人も、その線の上に置かれた数字です。
まとめ|念能力は何人まで効くのか
- クラピカの鎖とナックルのハコワレは、作中で1人ずつを相手にしている。そのぶん1人にかけられる効果が重い
- シャルナークのブラックボイスはアンテナ2本で同時に2人までとされ、代わりに地力の差を飛ばせる
- 同じアンテナを自分に刺す自動操作モードもあり、そちらの代償は人数ではなく自我と激しい筋肉痛
- モレナが直接感染させられるのは自分を含めて23人まで。発症者がレベル100で新たな感染源になり、上限は外側へ渡される
- プフの蝿の王は無数に分かれる代わりに、1体ずつが弱くなる
同時に何人へ効くかは、能力の格を決める数字ではありませんでした。今回並べた例では、他人を直接動かす型ほど、増やしたぶんをどこかで払っています。
届く広さと1つあたりの重さが両立した例は、この5つの中には見当たりません。人を動かす念には、そこに線が引いてあるのだと思う。
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