第二次試験のメンチには、審査員として失格ではないか、という批判が多い。ファンの掲示板にもそういう趣旨のスレッドが立つ。
ただ、メンチが破ったはずの基準は、原作のどこにも出てきません。試験官は審査員ではない。その年の基準として置かれた人です。
寿司の審査で何が起きたのか。そこへネテロが来て何をしたのか。順に確かめます。
※ハンター試験編の展開に触れます。
メンチの寿司審査で起きたこと
第二次試験の後半、メンチが出した課題は寿司。品名は伝えている。ただしジャポンの郷土料理になじみのない受験者には、聞いても何のことか分からない。
知っていたのは、ジャポン出身のハンゾーだけだったとされています。ところが提出した寿司は、味がまずいと酷評された。
逆上したハンゾーは、寿司をのせるだけのお手軽料理だと言い放つ。その勢いで作り方まで大声でバラします。おかげで見た目だけは寿司を成立させた受験者も出た。それでも味を理由に落とされます。
手掛かりから料理を当てる試験が、味を競う審査に変わっていた。そして審査の途中でメンチは満腹になり、そこで打ち切って合格者0を宣言します。
ハンター試験の試験官に、守るべき基準はない
メンチを審査員として責めるには、審査員が守るべき基準が要る。ところが、それが見当たらない。
トンパは受験者たちに、こう説明していました。その年の試験官が合格と言えば、悪魔だって合格できるのがハンター試験だ。誰が判断したかで決まる。中身は問われない。
不可と言われた場合も同じで、よほどの理由がなければそのまま通るとされています。
試験官は毎年変わり、内容もその年の試験官が決めるとされる。基準を作る人が入れ替われば、基準ごと入れ替わる。
第287期の課題を見ても、そろっていません。第一次はサトツに追走する。第二次はメンチとブハラの指定する料理を作る。第三次はリッポーが仕切るトリックタワーを72時間以内に降りる。
走る・作る・降りると、求められたものがばらばらです。受験者の何が測られていたのかは、別の記事で扱いました(→ ハンター試験は強さを測る試験?)。ここで見たいのは、試験官の側に共通の採点表が無いことのほう。
つまりメンチは、基準を外したわけではない。その日のメンチの舌と腹具合が、そのまま基準でした。
ハンター試験の合否は、ネテロが来ても動かなかった
試験官の判断がそのまま通るのかは、あの一件の後始末で分かる。
合格者0に不服の声が上がり、会長のネテロが現地に来ました。メンチ自身も審査が適切でなかったと認め、試験官失格だと口にしている。
ここで会長が合否を裁定していれば、上に基準があることになる。そうはならなかった。ネテロは試験官をメンチのまま続けさせ、新しい試験には実演としてメンチ自身も参加させています。やり直しの指示までが会長の役目。
課題を決めたのはメンチのほうです。マフタツ山の裂け目、断崖の途中に張られたクモワシの巣から卵を取ってきて、ゆで卵にする。会長が来ても、決める人は替わらなかった。
メンチが口にした失格は、規則に違反したという話ではない。自分の審査への評価です。失格かどうかを判定する上位の基準は、そもそも置かれていない。責める先があるとすれば、審査の中身ではなく人選のほうです。
試験官は審査員ではなく、その年の基準そのもの
協会が用意しているのは、基準ではありません。試験官という人のほうです。誰を試験官にするかを決めた時点で、その年の合格者の顔ぶれはだいたい決まる。
基準を文書にすれば、対策する人が出てくる。試験官が毎年変わるなら、事前に狙いを定められない。第287期の寿司にしても、知っていたのはハンゾーだけだったとされています。知識で先回りできる作りにはなっていません(→ ハンゾーの念能力は本体を置いて出かける)。
無報酬でプロハンターが試験官を務めるとされているのも、同じ考え方から来ている。金で雇った審査員は使わない。自分の目に責任を持つ同業者を置く。
通ったあとの扱いも変わりません。ハンターの星は業績で付き、二ツ星には育てた後輩が一ツ星を取ることが要る。誰かが見て決めるやり方は、試験のあとも続いている(→ 三ツ星ハンターの条件に強さは入っていない)。
冨樫はここで、公平さより「次に何が来るか分からない」ほうを取ったのだと思う。対策できない試験だから、受験者と一緒に読者も出方が読めない。合格率の話が数字として揺れるのも、同じ設計から出てきた結果です(→ ハンター試験の合格率は約58万分の1)。
まとめ|メンチが外したのは、存在しない基準だった
- 「メンチは審査員として失格」という見方は、審査員が守る基準があることを前提にしている
- ハンター試験にその基準は出てこない。試験官が合格と言えば通る、とトンパが説明している
- 試験官は毎年変わり、内容もその年の試験官が決めるとされる。第287期の課題も走る・作る・降りるとばらばらだった
- 合格者0のあとネテロが来ても、合否は裁定されなかった。指示はやり直しまでで、課題を決めたのはメンチ本人
- 協会が選んでいるのは基準ではなく試験官のほう。責める先があるとすれば人選になる
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