ジャイロの正体はメルエムの裏返し|伏線ごと残された“悪意の王”

ジャイロの正体は、NGL(ネオ=グリーン=ライフ)を作った男です。キメラアント編で半生だけが語られ、物語の表舞台には一度も立たないまま、行方をくらませた。

この男が何者なのかを追う考察は多い。ただ、いちばんの手がかりは意外な場所にあると俺は考えています。同じキメラアント編の中心にいた、もう一人の王。メルエムです。

力の出どころ・部下との関係・結末。この3点で2人を比べると、ジャイロがメルエムをすべて裏返した存在になっていることが分かる。そして裏返しだからこそ、再登場の見込みまで見えてきます。

※キメラアント編の結末(〜30巻)に触れます。

ジャイロとは誰か。分かっていることは3つ

NGL(ネオ=グリーン=ライフ)を作った男

表向きのNGLは、文明を拒んで自然とともに生きる自治国家。その実体は、麻薬「D²」を密造する犯罪国家だった。この国を作り、頂点に立っていたのがジャイロです。

生い立ちは20巻で明かされます。飯場で生まれ、言葉を覚えるより先に工事現場の仕事を仕込まれ、タダ働きの日々を送る。それでも少年を支えたものが2つあった。高熱の夜に父が徹夜で看病してくれたという記憶と、出て行けと言われたことは一度もない、という事実です。

12歳のとき、真実を知る。看病してくれたのは隣の老人で、父は、死んだら死んだで構わないと言い捨てていた。少年は父を手にかけ、飯場を出た。

以後のジャイロを支えたのは、夢でも希望でもなく悪意。彼の目的は、世界に悪意をバラ撒くことだったと語られます。

キメラアントに食われ、記憶ごと生まれ直した

NGLはキメラアントの巣になり、ジャイロも女王に捕食された。普通ならそこで終わり。でもジャイロは、人間の記憶と人格を保ったまま、兵隊蟻として生まれ直しました。

転生したジャイロは巣に残らず、静かに姿を消した。行き先は描かれていない。ここが、いまも回収されていない伏線です(ほかの謎は未回収伏線まとめで整理しています)。

部下だったウェルフィンが、今も探している

キメラアント編の最後、元NGL幹部のウェルフィンは、ヒナ・ビゼフと3人でジャイロを探す旅に出る。行き先は流星街。ウェルフィンが、ジャイロはそこにいると踏んだからです。

蟻に生まれ変わってもなお、部下が慕って追いかける。この締めくくりの場面だけで、ジャイロが部下にとって何だったのかが伝わる。

比較相手はメルエムしかいない|同じ女王から生まれた2人の王

ジャイロと比べる相手は、メルエムが最適です。同じキメラアント編で、同じNGLの地に立った2人の王。しかも、メルエムを産んだ女王と、ジャイロを蟻として産み直した女王は、同じ個体です。共通点がそろっているからこそ、差がはっきり出る。

基準 メルエム ジャイロ
生まれ 女王が産んだ最強の王 貧しい労働者の子
王への道 生まれた瞬間から王 悪意を動機に国を作った
力の中身 作中最強クラスの戦闘力 戦う描写はゼロ
部下が従う理由 王への畏れと本能 人としての心酔
物語の結末 人間の心を得て死んだ 悪意のまま行方不明

生まれと王への道は、境遇の差としてまとめられる。深掘りする価値があるのは、下の3行。力・部下・結末は、ただ違うのではなく、向きがきれいに逆です。

力の出どころが逆|最強の暴力と、暴力ゼロの悪意

メルエムの強さは、個体の性能です。生まれた瞬間から作中最強クラスで、その成り立ちは摂食交配で人間の才能を取り込んだ結果でした(詳しくはメルエムはなぜ最強で生まれた?で書いています)。

一方のジャイロに、戦闘の描写は一つもありません。念能力者かどうかすら不明。それでも一国を作り上げ、頂点に立った。腕力ではなく、思想で人を従えた王です。

つまり、力の出どころが正反対。メルエムは暴力の頂点として君臨し、ジャイロは暴力の描写を一切持たないまま、王であり続けています。「最強だから王」と「力を見せないまま王」が、同じ編の表と裏に並んでいる。

部下との関係が逆|畏れの主従と、心の主従

メルエムの配下は、王だから従う。種として刷り込まれた本能と、圧倒的な力への畏れ。主従の関係は、王の力に支えられています。

ジャイロの部下は逆でした。ウェルフィンは蟻に転生し、師団長の地位まで得たのに、すべてが終わったあとに選んだのはジャイロ。命令する者はもういないのに、探しに行く。力が消えても残る主従は、畏れではなく心でつながっています(探す側の男についてはウェルフィンの念能力でも書きました)。

結末が逆|変わって終わった王と、変わらないまま残る王

メルエムの物語は、変化の物語です。最強で生まれた怪物が、コムギとの軍儀で人間の心を知り、最期は王としてではなく、一人の相手として盤の前に戻った(この変化はコムギはメルエムと何が違ったかで掘り下げています)。

ジャイロは、何も変わらない。人間だったころも悪意、蟻に生まれ直しても悪意。生まれ変わりという最大の転機ですら、彼をまったく変えませんでした。

メルエムが「怪物が人間になっていく話」なら、ジャイロは「人間が怪物のままでいる話」。ここまで裏返しがそろうと、偶然とは考えにくい。

冨樫がジャイロを残した理由と、再登場の見込み

キメラアント編は「人間とは何か」を蟻の側から描いていました。王が人間の心へ近づいていく本筋の裏で、人間のまま怪物であり続ける男を対に置く。蟻との戦いの真っ最中に、ジャイロの半生へページを割いたのは、この対を作るためだった。原作に答えはありませんが、俺はそう解釈しています。

そして冨樫は、対の片側だけを未回収で残した。メルエムの物語は完結し、ジャイロの物語は宙に浮いたまま。しかもウェルフィンたちの旅立ちという「続きの入り口」まで描いてある。ジャイロは捨て駒ではなく、取り置きです。

再登場の時期は分かりません。ただ、行き先が流星街とされている点は見逃せない。流星街は幻影旅団の故郷で、暗黒大陸編の現在も物語に絡み続けている場所です。

ファンの間では、成長したゴンと対決するラスボス候補とする説も語られている。もし悪意の王が再び出てくるなら、メルエムが最期にたどり着いた答えと向き合う相手として描かれるはずです。

まとめ|ジャイロの正体は「メルエムの裏返し」

  • ジャイロはNGLの創設者。20巻で半生が語られ、目的は世界に悪意をバラ撒くことだったとされる
  • 女王に捕食されたが、記憶と人格を保ったまま兵隊蟻として転生し、行方不明のまま
  • メルエムと比べると、力の出どころ・部下との関係・結末のすべてが逆向きの「裏返しの王」
  • キメラアント編の最後では、ウェルフィンたちが流星街へジャイロを探しに向かった
  • 変わらない悪意だけが未回収で残されており、再登場のための取り置きと考えると筋が通る

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