休載の理由として冨樫が自分で書いた言葉は、腰を中心にした体の不調に寄っています。ゲームややる気を休載の理由に挙げた本人の言葉は、確かめた範囲では出てきません。
俺が集めたのは、冨樫本人の言葉と編集部の告知を合わせた11件です。本人の言葉は、Xの投稿、冨樫義博展に寄せた直筆メッセージ、本誌の巻末コメント。告知は2件です。「ゲームのせい」という通説がどこから来たのかも、あわせて確かめます。
※冨樫本人の発信と編集部の告知(2026年10月時点まで)に触れます。物語の中身には触れず、扱う話は単行本既刊分(〜39巻)までです。
ハンターハンターの休載理由は「ゲームとやる気」という通説
休載が長引くたびに、ネットでは「ゲームをしているから」「やる気がないから」と言われてきました。RENOTE の記事は、休載がゲームのせいだとする説を紹介している。「ゲームに熱を上げるのが原因ではないかとする説があるほど」という書き方です。Yahoo!知恵袋にも「冨樫義博はゲームをしてるから休載してると言われてますが」という質問が立っています。
やる気の側の声もある。知恵袋の別の回答は「腰痛もあると思うけど、シンプルに描くモチベーションもないと思いますよ」。腰痛は認めつつ、本当の理由は意欲だという見方です。
ゲームの説の出どころとしてよく挙がるのが、本誌の巻末コメントです。冨樫はそこで、ゲームの話を何度も書いてきた。いただきストリート、鬼武者、ドラゴンクエストIX。2010年には「プレイ時間140時間を超えましたがセントシュタイン城から出れません。レベル11。」と書いています。
ただ、どのコメントも遊んだ話で、休載やその理由には触れていない。RENOTE も、休載はゲームのせいという話を、ゲーム好きな冨樫の言葉からネット上で広がった噂だとしています。真偽は不明、という扱いです。
冨樫の腰痛|直筆メッセージの「2年ほど椅子に座れない」
本人が理由をいちばん詳しく書いたのは、2022年7月の直筆メッセージ。冨樫義博展 -PUZZLE- の開催が発表されたとき、一緒に公開されたものです。
そこには「2年ほど椅子に座れない状態で描けませんでした」とある。続けて、従来のやり方をあきらめることで執筆を再開した、と伝えています。2週間前までお尻をふく姿勢がとれなかった、という話まで出てくる。「皆さま、くれぐれも腰は大切に。」とも添えていました。
2024年の夏も、Xに腰の話が続きます(Xの投稿と原稿の進み方は→冨樫のXの進捗報告)。
- 8月12日:「ここ数日腰の機嫌が良くない」
- 8月28日:「便座に座ってて腰やった。カラーは途中。寝ながらネームやります」
- 8月31日:施術で回復したと書き、「どうやらカラー制作中の姿勢が今回の腰痛の原因らしい」
11件の中で、腰痛の原因を「原因らしい」と言葉にして書いたのは、この8月31日の投稿だけ。白黒の原稿とカラーでは体勢が微妙に違う。そう人に指摘されて、初めて気づいたそうです。
2024年11月28日には、手術をしたと報告している。ただ、どこを手術したのかには触れていません。12月11日には「訳あって数日寝たきりでした」。腰の話が続いた時期ですが、ここでの理由は「訳あって」だけです。
冨樫の言葉と編集部の告知、休載の前後の11件を数える
HUNTER×HUNTER の連載が始まった1998年以降で集めると、文面が分かるものは2016年から2026年までの11件。冨樫本人の言葉が9件、編集部の告知が2件です。理由にあたる言葉で分けると、次のとおりです。
| 時期 | 誰が・どこで | 理由にあたる言葉 | 分け方 |
|---|---|---|---|
| 2016年春〜夏 | 冨樫・巻末コメント | 腰痛の話が続く | 体 |
| 2016年7月 | 編集部・休載の告知 | 書かれていない | 理由なし |
| 2018年11月 | 冨樫・巻末コメント | 体調や状況と相談しつつ | 体+ほか |
| 2022年7月 | 冨樫・直筆メッセージ | 椅子に座れない・腰 | 体 |
| 2022年12月 | 編集部・告知 | 冨樫先生の体調などを鑑み | 体+ほか |
| 2024年8月12日 | 冨樫・X | 腰の機嫌が良くない | 体 |
| 2024年8月28日 | 冨樫・X | 腰やった | 体 |
| 2024年8月31日 | 冨樫・X | カラー制作中の姿勢が腰痛の原因 | 体 |
| 2024年11月28日 | 冨樫・X | 手術の報告 | 理由なし |
| 2024年12月11日 | 冨樫・X | 訳あって寝たきり | 理由なし |
| 2026年10月5日 | 冨樫・X | 心身の不調が重なり | 体+ほか |
体だけを挙げたものが5件。「など」「状況」「心身」と、体だけに絞らない言い方をしたものが3件ある。理由を書いていないものも3件でした。体以外だけを理由にしたものは、1件もありません。
2016年は、4月に連載が戻ってから、巻末コメントで腰痛のことを書き続けていたとされます。2014年の休載も腰痛によるものと言われる。ただ、本人と編集部のどちらが出した話なのかは分かっていません。
2026年10月5日の投稿は、締切がある仕事の依頼をすべて断ると知らせたものです。「心身の不調が重なり」と書き、自分の原稿を優先するとしている。理由は心身の不調で、ほかの仕事を断るのはその対処にあたります。休載を告げる文ではありません。
やる気の説も、この11件で見ると材料がない。描く気が起きない、と書いたものは1件もありません。2026年10月の投稿も、手放すのはほかの仕事で、原稿は優先するほうに置いています。
幽☆遊☆白書の終わりは、体以外の理由も書いていた例外
冨樫が体以外の理由を自分で書いた例は、前の連載までさかのぼると1つ出てきます。1994年に終わった幽☆遊☆白書です。
冨樫は、終了の事情を同人誌『ヨシりんでポン!』に書いています。報道によると、2ページにわたる文章は「今までの文章を要約します。わがままでやめました。」と締めていました。
記者のまとめでは、理由は3つあったとされる。徹夜すると心臓に痛みが走るという体の不安。原稿を全部一人で仕上げたいという気持ち。自分が満足できるマンガを描きたくなったこと。体の話も入っていますが、残りの2つは描き方の好みの話です。
この反例があるので、「冨樫は体のことしか書かない」とは言えません。言えるのは、HUNTER×HUNTER の休載では、体以外を理由に挙げた本人の言葉が出てこないところまでです。
休載理由をぼかした言葉|「体調など」と「訳あって」
11件のうち6件は、理由を言い切っていないか、そもそも書いていません。2022年12月の告知は「体調など」で、体調だけとは言っていない。2018年の「体調や状況と相談しつつ」も、体と並べて状況を挙げています。
この「など」や「状況」に何が入るのかは、どの資料にも書かれていない。ここをゲームややる気で埋めるのは、読者の推測です。逆に、体調だけだと言い切る材料もありません。11件のどれにも、病気の名前は出てこない。
もう1つ、言葉の違いがある。2022年12月で週刊連載が終わり、No.401以降は週刊ではない形で載ることになりました。それ以降、公式は「連載再開」と言わず「掲載」と書く。巻末にも「休載」という表記はありません。2023年以降の空白を「休載」と呼ぶのは、読者の側の呼び方です(空白の長さは→ハンターハンターの休載期間)。
冨樫が休載理由に挙げたのは体|ゲームを理由にした本人の言葉は見当たらない
ゲームの通説は、巻末に並んだ遊びの話から広がったと見られています。遊びの話そのものは、本当にあったコメントです。ただ、休載の前後に冨樫が書いた言葉に、ゲームは理由として出てこない。
本人が書いたのは、椅子に座れない2年間、カラーの姿勢で痛めた腰、寝ながら描くネーム。やる気の有無は本人の内心の話で、資料からは決められない。それでも、何が描くのを止めたのかを冨樫が言葉にしたとき、挙げていたのは体のことでした。冨樫が自分で書いた休載の理由は、腰を中心にした体の不調に寄っています。
まとめ|ハンターハンターの休載理由を本人の言葉で確かめると
- 「休載はゲームのせい・やる気がない」という通説は、知恵袋やまとめ記事で今も語られている
- 出どころとされるのは巻末コメントのゲームの話。ただ、どれも遊んだ話で、休載の理由には触れていない
- 1998年以降の本人の言葉と告知11件のうち、体が5件、体+ほかが3件、理由なしが3件。体以外だけの理由は0件
- 2022年7月の直筆メッセージには「2年ほど椅子に座れない状態で描けませんでした」とある
- 幽☆遊☆白書の終わりでは「わがままでやめました」と、体以外の理由も書いていた。HUNTER×HUNTER の休載では出てこない
休載の長さそのものは、単行本の発売日から数えた記事があります。再開とXの完成報告の関係も、別の記事で数えました。
関連記事:
- ハンターハンターの休載期間 — 単行本の発売日で数えた休載の長さ
- 冨樫のXの進捗報告 — 原稿の完成報告と本誌の掲載の関係
- ハンターハンターの構想は3話分だけ? — 冨樫が連載前に決めていたこと
- ハンターハンターの結末Dパターン — 冨樫の手紙で明かされた結末の案
- ハンターハンターの単行本の収録話数 — 10話ずつ続く掲載と収録の形
