考察サイトのコメント欄には、こんな読み方が並びます。「イルミから見ればヒソカは金をくれる大事な依頼人」「ビジネスライクな関係」「ビジネスパートナー」。
依頼し合う仲で、そこに金が絡む。多くの読者がそう受け取っている。依頼のほうは原作どおりです。ただ、金のほうは事情が違う。
この受け取りを3点に分けて、原作と照らします。
※ヨークシン編・会長選挙・アルカ編と、ヒソカが旅団へ出した依頼に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
ヒソカとイルミは、実際に依頼し合っている
まず一致している点から。2人が依頼を出し合う関係だというのは、原作の描写どおりです。
ヒソカからイルミへは2件。ヨークシン編の終盤、旅団のアジトを抜けるために、ヒソカはイルミへ変装を頼んでいます。自分の影武者に立ってもらう形だ。
のちにはイルミへ、旅団に入って自分を狙うよう依頼している。標的として指定されたのはヒソカ自身だ。
逆向きも1件あります。会長選挙・アルカ編で協力を求めたのはイルミのほうだった。ゾルディック家の秘密とアルカの能力をヒソカへ明かし、そのうえで手を借りている。
依頼する側と受ける側は固定されていません。向きは場面ごとに入れ替わる。
2人のあいだで金が動く場面は、原作に見当たらない
食い違いが大きいのはここです。ヨークシンの変装も報酬つきの仕事だった、という説明を見かける。ただ原作を当たると、その裏づけが出てこない。ヒソカとイルミのあいだで金銭が動いたコマは確認できません。
引き受けたときイルミが挙げた理由も、金額ではなかった。団長より付き合いが長い。承諾の理由としてイルミが口にしたのは、その点だ。同じヨークシン編で団長からも依頼を受けている側が、付き合いの長いほうを選んでいる形になります。
2人のあいだで「報酬」の語が出るのは1か所だけ。旅団加入の依頼に付いてきた婚前契約です。ヒソカが死ねばイルミに報酬が入る、という取り決め。
この取り決めは、普通の報酬の形をしていません。支払いの条件が依頼主の死に置かれていて、依頼の時点では何も動かない。しかも死ぬのはヒソカ自身で、その死を用意するのがイルミの仕事だ。報酬というより、依頼の中身と支払いが同じ出来事になっている。
ゾルディック家は依頼で動く家業ですが、その依頼料も原作には出てきません(→ ゾルディック家の暗殺依頼料は原作に出てこない)。あちらは家業全体で金額が伏せられているという話。こちらは、2人の関係に金の場面そのものが見当たらないという話です。
「ビジネスパートナー」は原作のセリフではない
3点目。この呼び方は、原作のセリフとしては確認できない。解説や読者の側で使われている表現です。
ただ、指している中身までは外れていない。ヒソカはイルミに95点を付けている。値踏みする視線があるのは原作の描写どおりだ(→ ヒソカの採点は強さの順位とは限らない)。
言葉の出どころが原作でないだけ、と受け取るのがちょうどいい。
イルミに頼んでいるのは、ヒソカだけではない
もう1つ、この読み方から抜け落ちる事実があります。イルミは暗殺者として、ヒソカ以外からも依頼を受けている。ヨークシン編では団長が十老頭の暗殺を依頼した。ヒソカが唯一の依頼人というわけではありません。
そう見ると、イルミがヒソカの依頼を受けること自体は、家業の延長に収まる。特別な関係だから受けているとまでは、原作から言えない。
入れ替わっていないのは、何のために頼むか
3点を照らすと、この読み方が何を対等さの目安にしていたかが見えてくる。依頼の向きです。向きは実際に入れ替わる。だからその点では合っている。
それでも、2人が同じことをしているようには見えません。理由は目的の側にある。
確認できる依頼は3件。ヒソカが頼んだ2件は、どちらも自分が戦うための準備でした。変装は団長と戦うために生き延びる手段。
旅団加入の依頼は、自分を狙わせて戦いを作るためのもの。入団という手続きそのものでは足りなかった、という話は別に書きました(→ ヒソカが幻影旅団に入った理由)。
イルミが頼んだ1件は、家族が絡む場面で出ている。アルカの件でヒソカを引き入れたのは、きょうだいをめぐる家の問題だった。キルアに針を刺し続けたのも同じ場面の並びにある(→ キルアはイルミの針が抜けても逃げる)。
ただし、イルミ本人が動機を語る場面は原作にありません。言えるのは、依頼が出てくる場面が家族の側に寄っているというところまでです。
確認できる範囲では、ヒソカの理由が家族に寄ったことはない。イルミの理由が自分の楽しみに寄ったこともない。
ヒソカとイルミの関係が続いている理由
欲しいものが重ならないから、この釣り合いは崩れないのだと俺は見ています。
同じものを取りに行く2人なら、いつか奪い合いになる。ヒソカが求めるのは強い相手との戦いで、イルミが求めるのは家の都合だ。別々のものを取りに行くなら、譲る場面は来ない。
ヒソカがイルミに95点を付けながら、戦いを仕掛けた描写は確認できません。この読みなら、そこにも説明が付く。
確認できる範囲では、点数と執着が一致しないのはヒソカの採点全体に言える。イルミに限った話ではない。そのうえで、戦う以外の使い道があるうちは手を出さずに済む、とも読めます。
もっとも、婚前契約の中身を考えると、この状態がいつまで続くかは分かりません。ヒソカが死んだときにだけ報酬が発生する取り決めを、2人ともそのまま置いている。
まとめ|ヒソカとイルミの関係を原作で確かめる
- 依頼の向きは入れ替わる。ヒソカからイルミへ2件、イルミからヒソカへ1件の実例がある
- 2人のあいだで金銭が動いたコマは確認できない。変装を引き受けた理由も、金額ではなく付き合いの長さだった
- 2人のあいだで「報酬」の語が出るのは婚前契約だけ。支払いの条件はヒソカ自身の死に置かれている
- 「ビジネスパートナー」は原作のセリフとしては確認できない。解説や読者の側の表現
- イルミの依頼人はヒソカだけではない。ヨークシン編では団長からも依頼を受けている
依頼し合う関係、というところまでは原作と一致します。金の部分だけが、裏づけを持っていなかった。
同じ取り決めに見えて、2人が取りに行っているものは別です。そこが重ならないかぎり、この2人は当分ぶつからないのだと思います。
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