クラピカが女性ではないか、という話は今も定期的に立ち上がります。
本編に出ている材料は、男性の側に傾いている。ただしそれは呼び名と一人称で、性別を名指しした記述ではありません。
この問いが正面から話題になるのも、ヨークシン編の終盤にある変装の場面だけだ。そこでクラピカは、答えを返していない。
代わりに置かれ続けているのは、一族のほうです。
※ヨークシン編と、王位継承戦編で明かされた設定に触れます。扱うのは単行本既刊分(〜39巻)まで。
クラピカが男と読める材料は、呼び名と一人称にある
幻影旅団はクラピカを「鎖野郎」と呼びます。人ではなく能力を名前にした呼び方だ。
一人称は普段「私」。故郷にいた頃と心の中の言葉では「オレ」になります。ただしモノローグで「私」を使う場面もあり、きれいには分かれていない。
どちらも男性を指す言い方に寄っている。ただし呼び名と一人称であって、性別を名指しした記述ではありません。出ているのは傾きのほうだ。
クラピカの性別が正面から話題になるのは、変装の場面
ヨークシン編の終盤、クラピカはホテルの受付の女性に変装してクロロを捕らえます。
捕らえられたクロロは、鎖の使い手が女性だとは思わなかった、という趣旨のことを口にする。クラピカの返しは、自分がそう言った覚えはない、見た目に惑わされるな、というものだ。
問いが立った直後に、答えが返らないまま話が進んでいる。性別がまっすぐ話題になるのは、この場面です。
女性説が消えないのは、容姿だけが理由ではない
女性説はいまも生きていて、考察の場で何度も蒸し返されます。
理由として挙がるのは、まず容姿。人物紹介では中性的な容姿として書かれます。原作の描写ではなく、紹介記事の側の言葉だ。
そこに変装の場面が重なる。作品の側が一度その問いを立てて、答えを出さないまま先へ進めた。
読者が確かめに戻ってくる入り口が、ここで開いたままになっている、と読めます。
「公式ガイドに男と書いてある」はどこまでたどれるか
もう一つよく出てくるのが、公式ガイドブックのハンターズガイドに性別の記載がある、という話です。
ハンターズガイドに載っているのは身長171cmと体重59kg。性別の記載があるという話は広く出回っています。ただしどれも又聞きで、誌面そのものを示したものは出てきません。劇場版のパンフレットに書かれている、という話も同じ形だ。
そもそもハンターズガイドは2004年で止まった本で、本編と食い違う記述も見つかっています(→ ハンターズガイドと本編の食い違い)。ここを根拠に答えを決めるのは、順番が逆です。
クラピカを紹介する言葉は、いつもクルタ族から始まる
では、クラピカについて何が先に置かれているのか。
クルタ族の生き残りという立場。128人の一族が皆殺しにされた過去。緋の眼は世界七大美色に数えられ、市場で値が付いている。人物の紹介はここから始まり、目的もここから出てきます(→ クルタ族が滅ぼされた理由 / 緋の眼はなぜ市場を渡り歩くのか)。
呼ばれ方も同じ向きだ。旅団が使うのは能力を指す呼び名で、鎖のほうも緋の眼の状態が中身を決めている(→ クラピカの念能力は“二段構え”)。
ノストラード組でも王位継承戦でも、クラピカが立つのは護衛の立場。そこへ入った動機は、どちらも緋の眼の側にあります。寿命を削る代償まで、緋の眼から出てくる(→ クラピカの寿命はあと何年?)。
立場・目的・能力・代償。クラピカを説明する4つが、そろって一族の側につながっている。性別が空いたままなのは、この順番が続いた結果ではないか。クルタ族と緋の眼が先に来るぶん、個人の属性は後ろへ回った、と読めます。
性別が空いていることで、できている動きがある
空白ができた理由だけでは、まだ半分だ。その空白が何を可能にしているかも見ておきたい。
一つは、女装での潜入が奇策に見えないこと。あの場面で口にされているのは、女性だとは思わなかった、という中身です。性別が決め打ちされていないぶん、作戦が突飛にならずに収まっている。
もう一つは、読者の側の動きだ。答えが出ていないので、この話題は何度でも出てくる。長く問い直されてきたこと自体が、その働きの結果だと言えます。
冨樫がそこまで狙って組んだかは、作中からは決められない。ただ、クラピカの紹介順がそうなっていることと、空白が働き続けていることは、どちらもはっきりしている。
まとめ|クラピカの性別と、原作が先に置いているもの
- 本編の材料は男性の側に傾いている。旅団が呼ぶ「鎖野郎」、故郷にいた頃と心の中の「オレ」。どちらも呼び名と一人称で、名指しの記述ではない
- 性別がまっすぐ話題になるのはヨークシン編の変装の場面。クロロの言葉に対して、クラピカは見た目に惑わされるなと返すだけだった
- ハンターズガイドに載っているのは身長と体重の数値。性別の記載があるという話は又聞きばかりで、本そのものも2004年で止まっている
- クラピカを説明する立場・目的・能力・代償の4つは、そろってクルタ族と緋の眼につながっている
- 空白のおかげで女装での潜入が奇策に見えず、読者が確かめに戻る入り口も開いたままになっている
変装を見抜かれたクラピカが返したのは、見た目に惑わされるな、の一言だった。あの返しが今も効いているのは、そこから先が一族の話へ移っていくからです。
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- 緋の眼はなぜ市場を渡り歩くのか — 世界七大美色に値が付く事情
- クラピカの念能力は“二段構え” — 鎖と緋の眼で組まれた能力
- クラピカの寿命はあと何年? — 緋の眼が背負わせている代償
- ハンターズガイドと本編の食い違い — 資料をどこまで根拠にできるか

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