王位継承戦は、14人の王子による殺し合い。生き残った1人が次の王になる。
ところがカキンには、王族殺しを極刑とする決まりもあります。殺し合えと言いながら、殺せば処刑される。この2つはどう両立しているのか。
答えは、規定を全部並べると見えてくる。継承戦のルールは、王子が自分の手で戦うことを想定していない。むしろ王子を動けなくして、周りに争わせるように組まれています。
※暗黒大陸編・王位継承戦編(単行本既刊分)の設定と展開に触れます。
王位継承戦のルールを整理する
継承戦は、暗黒大陸へ向かうブラックホエール号(B・W号)の中で進む。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 舞台 | ブラックホエール号 |
| 参加者 | 8人の王妃が産んだ14人の王子 |
| 勝つ条件 | 生き残った唯一名が王位継承者になる |
| 王子の番号 | 生まれた順で決まる |
| 事前の儀式 | 壺中卵の儀で守護霊獣を授かる |
| 王族殺しの罰 | 一族もろとも処刑 |
| 王妃への罰 | 王子暗殺を指示しただけで投獄 |
王子の番号は生まれ順です。母の序列がそのまま番号になるわけではない。ただし王妃の序列は、その王子が動かせる人手や権限の大きさに関わってきます。
壺中卵の儀は、初代国王が蠱毒から思いついたとされる手続き。壺に自分の血を入れ、王位への思いを念じる。すると王子ごとに違う守護霊獣が生まれる。
守護とは言うものの、王子を助けるとは限りません。人格が形と能力に出るうえ、本人の意思とは無関係に働く。
守護霊獣に課された制限
継承戦の仕組みで重要なのが、霊獣に付いた制限です。
霊獣の本能として描かれているのが次の2つ。
- 守護霊獣同士は殺し合わない
- 守護霊獣がついた人間を直接攻撃しない
あわせて、霊獣の性質として語られているのが2つ。
- 取りついた者のオーラを糧にする
- 王子の意思では動かせない
オーラを吸われ続けるのは代償の話。残る3つが、継承戦の仕組みを読み解く手がかりになります。
ルールを重ねると、王子は自分で戦えなくなる
ここまでの規定を全部重ねてみます。
王子が他の王子を殺す方法は、大きく2つ。自分の手で殺すか、霊獣に殺させるか。前者は王族殺しとして極刑。後者は霊獣の制限で封じられています。
つまり継承戦は、王子本人が勝ちに動く手段をほぼ取り上げた状態で始まる。それでいて勝利条件は「生き残った1人」です。
では誰が殺しているのか。護衛と私設兵、そして王妃が動かす兵です。
王妃も表立っては動けません。暗殺の指示を出しただけで投獄される決まりだからです。それでも兵は実際に動いていて、王子は自分の陣営が仕掛けるのを待つしかない。
制度が想定した参加者なら、これで問題は起きません。第1王子ベンジャミンは私設兵を厚く抱えている。第4王子ツェリードニヒは兄弟の抹殺を口にした。
手駒を持ち、王になりたいと思っている王子。継承戦はこの型に合わせて作られている。
ただ、14人全員がこの型に収まるわけではない。はみ出す例が3つあります。
降りられなかった第9王子ハルケンブルグ
第9王子ハルケンブルグは、出航の時点で継承戦そのものを否定していました。兄弟を殺して玉座に座ることを良しとしない立場。
それでも儀式は済んでいる。霊獣は付き、オーラは吸われ続ける。しかも霊獣は本人の操作を受け付けません。降りたいという意思とは無関係に、勝手に働く。
ここが継承戦の残酷なところ。ルールは「参加しない」という選択肢を用意していない。儀式を受けた時点で、抜ける道がなくなります。
その後ハルケンブルグは、武力で勝ち残る側へ方針を変えました。否定していた戦いに、結局は乗ることになる。ハルケンブルグを見れば、継承戦が王子の同意を必要としていないと分かる。参加も離脱も本人が決められないなら、それは競争ではなく処理に近い。
抜けようとした第10王子カチョウと第11王子フウゲツ
第10王子カチョウと第11王子フウゲツは双子。2人は継承戦から抜け出すことを計画しました。
抜け出す手段が「脱出」しかなかった点が重要です。降りると宣言する窓口も、辞退する手続きもない。だから船から逃げるしかなかった。
計画は失敗します。船外へ出る局面でカチョウは襲われ、命を落とした。
船の外まで出られたのはフウゲツだけ。そのフウゲツも、自分の能力で自室へ戻るしかなかった。のちに逃亡事件の重要参考人として、司法局に保護されています。
逃げ切ったはずのフウゲツも、継承戦からは外れていません。船内に戻された時点で、王子としての数え方は変わらないまま。
ハルケンブルグは制度の内側で否定し、カチョウは外へ出ようとした。方向は逆でも、結果は同じ。制度は、降りたい参加者が抜ける手段を用意していません。
何も選べない第14王子ワブル
末子のワブルは、継承戦が始まった時点でまだ乳児でした。
意思表示ができない以上、王位を望むことも降りることもできない。それでも壺中卵の儀は王子全員が受ける決まり。ワブルも第14王子として継承戦の数に入っています。動いているのは母のオイト王妃と、護衛についたクラピカだけ。
ワブルは、継承戦の前提をそのまま見せてしまう存在だと俺は考えています。王子の意思がなくても制度は問題なく回る。回るということは、もともと王子の意思を必要としていなかった。
赤ん坊が参加者として成立してしまう時点で、この制度が測っているのは王子の器量ではありません。見ているのは、周りにどれだけの人手と力が付いているか。それだけ。
王位継承戦が本当に測っているもの
降りられない王子、逃げるしかない王子、選べない王子。3つとも、制度が想定した「王位を望んで自ら争う王子」ではありません。
それでも継承戦は止まらない。本人の意思と無関係に霊獣が働き、陣営が殺し合い、数が減っていく。
ここから見えるのは、王位継承戦が王子を競わせる仕組みではないという読み方です。王子を動けない状態に固定し、その周りにいる人間の力比べで王を決める。カキン王家が代々受け継いできたのは競技ではなく、王を選び出すための手続きに近い。
だから継承戦では、王子の人格や能力より、母の序列と私設兵の数が結果を左右します。壺中卵の儀が王子の意思を反映せず、霊獣に自由を与えないのも、この読み方なら無理なく説明できる。
まとめ|王位継承戦は王子を動けなくする制度
- 王位継承戦は14人の王子による殺し合いで、生き残った唯一名が王位を継ぐ
- 一方で王族殺しは極刑。守護霊獣も王子の操作を受けず、他の霊獣や霊獣持ちを直接攻撃しない
- 規定を重ねると、王子本人が勝ちに動く手段はほぼ塞がれている。実際に動くのは護衛・私設兵・王妃の兵
- ハルケンブルグは降りられず、カチョウは逃げるしかなく、ワブルは選べない。3つとも制度の想定から外れている
- それでも継承戦が回る以上、この制度が測っているのは王子個人ではなく、周りに付いた力の量だと読める
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