メルエムの念能力は特質系じゃない?放出系説を原作と冨樫展メモで検証

メルエムの念系統は「特質系」。ファンの間では長くそう言われてきました。でも原作の本編で系統が名指しされた場面はなく、むしろ作者のメモをもとにした公式の設定資料では「放出系」とされています。広まった通説と、作者の手による設定がずれている。

その設定資料は、2022年に集英社が手がけた「冨樫義博展 -PUZZLE-」で初めて公開されたものです。冨樫義博のメモをもとに作られた念能力の資料で、複数キャラの系統が載っていました。

メルエムをめぐる通説は、ほかにもあります。「相手の能力をコピーする」「最初から完成した最強」。この3つを原作の描写と公式資料にひとつずつ突き合わせ、○か△か×かを付けていきます。最後に残るのは「放出系の王」という結論。原作とも公式の設定とも、いちばん矛盾しません。

※キメラアント編の結末(メルエムの最期)に触れます。未読の方はご注意ください。

まず、原作がメルエムについて描いたこと

判定に入る前に、原作が実際に描いたことだけを、解釈を交えずに並べます。3つの通説は、どれもこの事実と照らし合わせて確かめていきます。

メルエムはキメラアントの王。母である女王から、女王の体を内側から食い破って生まれました。キメラアントは「摂食交配」で増える種です。女王が食べた生き物の特徴を、生まれる子に取り込んでいく。メルエムはその頂点として生まれた個体です。

生まれた直後から規格外でした。オーラの量は作中でも最大級。軍儀以外のボードゲームでは、ルールを覚えて数時間で各分野のチャンピオンを叩き伏せています。耐久も異常で、ネテロの百式観音による無数の打撃をほとんど通さない。

終盤、メルエムは王直属護衛軍のシャウアプフとモントゥトゥユピーを、その身に取り込みます。結果、ユピーの体を変える力やオーラの砲撃、プフの鱗粉を使った広い「円」で相手の感情まで読み取る力を、自分のものにしました。

ここまでが原作の事実です。「系統が何か」は、本編では一度も明言されていません。これを踏まえて、通説を1つずつ検証します。

通説①「メルエムは特質系」── 公式メモと照らすと×

通説の中身と、なぜ広まったのか

一番広く信じられてきたのが「メルエムは特質系」という見方です。能力バトルを語るファンの考察で、ずっとこの前提が共有されてきました。

なぜそう広まったのか。特質系は「ほかの5系統のどれにも当てはまらない特殊な力」の枠です。メルエムの「食べて相手の力を取り込む」能力は、強化でも変化でも放出でもないように見える。しかも他人の念を奪うクロロ、特殊な力を複数あやつるネフェルピトーといった“変わった力”の持ち主が特質系でした。この並びに、メルエムも自然と置かれていったわけです。

原作と公式メモが実際に示していること

ところが、原作の本編はメルエムの系統を一度も名指ししていません。「特質系だ」というセリフも描写もない。つまり特質系説は、本編に直接の裏づけがない推測でした。

一方で手がかりはあります。2022年の「冨樫義博展 -PUZZLE-」は集英社が手がけた公式の展覧会です。ここで、冨樫義博のメモをもとに作られた念能力の設定資料が初めて公開されました。本編で説明されなかった設定を含む資料で、複数キャラの系統も載っている。そこでメルエムは「放出系」に位置づけられていました。

判定×、正しい理解は「放出系」

通説と突き合わせると、結論はこうです。「特質系で確定」という理解は×。作者本人のメモに「放出系」とある以上、特質系で固めるのは食い違います。

ただ正直に線を引くと、放出系の根拠は本編のセリフではなく、作者のメモをもとにした設定資料です。本編で系統名が出ていない以上、この資料を暫定的なものと見て特質系の読みを残す人がいるのも自然で、そこは△の余地として認めます。それでも現時点で最も公式に近い答えは、放出系です。

では、なぜ「食べて力を得る」が放出系で説明できるのか。放出系は「オーラを体から切り離して、離れた場所に留めておける」系統です。普通はオーラを体から離すと消えてしまう。それを留められるのが放出系の核心(念能力の六系統の記事で整理しています)。

この「オーラを留める」を逆向きに読むと、どう見えるか。俺は、他者のオーラを自分の側に引き込んで留める運用も放出系の応用だと考えています。メルエムが護衛軍を取り込んで力を保ち続けたのは、まさにオーラを自分に留め続ける描写でした。放出系という答えは、原作の描写とよく噛み合います。

ヒソカの「オーラ別性格分析」でも、放出系は「短気で大雑把」。同じことを二度言わせるのを嫌い、命令に従わぬ者を即座に手にかけるメルエムの短気さは、その放出系像とそのまま重なります。

通説②「メルエムは相手の念能力をコピーする」── 仕組みが違うので△

次に多いのが「メルエムは食べた相手の念能力をコピーする」という理解です。クロロの「盗賊の極意(スキルハンター)」と並べて語られることもあります。

原作の描写を見ると、半分は合っています。メルエムは護衛軍を取り込み、その力を使えるようになった。ただし中身が違う。クロロが奪った能力を「手札」として保管し、本のかたちで出し入れするのに対し、メルエムは取り込んだ特性を自分のオーラ量に溶かし込み、元の持ち主より上手く使ってしまいます。

つまり「コピー(複製してそのまま使う)」ではなく、「取り込んで作り変える」。元の能力をなぞるのではなく、自分の桁違いの出力で上書きしている。判定は△。「相手の力を得る」は本当だが、「コピー」という言葉が仕組みを取り違えさせます。

通説③「メルエムは生まれた時から完成した最強」── 素体は規格外だが△

最後は「メルエムは最初から完成した最強だった」という見方です。誕生直後の圧倒的な描写から、そう受け取った人は多いはずです。

これも半分です。オーラの量と頑丈さという「素体」は、たしかに生まれた瞬間から規格外でした。けれど強さの中身は、生まれてからの数十日で急に伸びています。各分野のチャンピオンとの勝負で戦術を吸収し、コムギとの軍儀では一度も勝てないまま思考の深さを学び、人としての心まで手に入れていった。

完成して生まれたのではなく、異常な速さで完成へ駆け上がった個体。判定は△です。「最初から最強」は素体の話としては合い、強さの中身の話としてはずれます。この「取り込んで底上げし続ける」設計は、何かを差し出す代わりに力を伸ばす念のふつうの仕組みとは逆向き。ほぼ無制限に出力を積み増せる点に、メルエムの異質さがあります(力と引き換えの損得は制約と誓約の記事で扱いました)。

まとめ

  • メルエムの系統は本編で明言されていない。だが冨樫義博展で公開された設定資料(作者のメモがもと)では「放出系」とされている
  • 「特質系」説は×。摂食が特殊に見えただけで、本編の裏づけはなく、公式の設定資料では放出系とされる
  • 「能力コピー」説は△。力を得るのは本当だが、コピーではなく取り込んで作り変える設計
  • 「最初から完成した最強」説も△。素体は規格外だが、強さの中身は数十日で急成長した
  • 放出系は「オーラを体から離して留める」系統。他者のオーラを自分に留める読みは、メルエムの摂食とよく噛み合う

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