念能力は複数持てるのか|増やし方が全員バラバラだった

発をいくつまで持てるのか。作中に上限の明言はなく、ヒソカは現に2つ持っています。

ではクラピカの5本の鎖やクロロの盗んだ能力はどうなのか。増やし方と、そのために払っているもので比べると、3人のやっていることは全部違う。数え方が読者と一致するのはヒソカだけです。

※天空闘技場編・ヨークシン編、およびクロロとヒソカの戦いに触れます。

「発」と数えないものを先に外す

数え違いが起きるのは、技名がそのまま能力の数に見えるからです。まず、発と数えないものを外しておく。

凝や円のような四大行の応用は、誰が使っても発とは別枠。念を扱う技術であって、その人固有の能力ではありません(→ 念の応用技「凝・円・硬・流・隠」を整理)。

技名を叫ぶ行為も、能力を増やしているわけではない。宣言を自分への縛りとして使うと威力が上がる。制約と誓約の一種です(→ 念能力の技名を叫ぶのは仕様)。

読者が数えている「技」には、発そのもの・発の使い分け・基本の応用・呼び名が混ざっている。数が合わないのは当然でした。

比べる基準は4つ。差が出るのは後ろの2つ

勝ち負けの話ではないので、見るのは次の4点だけ。

  • 読者から見た技の数
  • 発をいくつと数えるか
  • どうやって増やしたか
  • 増やすために払っているもの

前の2つは前提の整理。後ろの2つで差が出ます。

もうひとつ、数の代わりに置かれている制限にも触れておく。容量(メモリ)という言い方です。まとまった設定説明ではなく、天空闘技場でヒソカが口にしたもの。込み入った発を覚えると、ほかの発が使えなくなるという趣旨でした(→ 念の「メモリ(容量)」が強さを決める)。

上限の置き方が数ではなく容量なら、問われているのは「いくつ持てるか」ではない。容量をどう使ったか、です。

念能力を複数持つ3人を4つの基準で見比べる

基準 ヒソカ クラピカ クロロ
読者から見た技の数 2 5本の鎖+絶対時間 盗んだ数だけ
発をいくつと数えるか 2つ 決まっていない 1つ
増やし方 自分でもう1つ作る 具現化した鎖に働きを分ける 他人から奪って本に収める
払っているもの 発を2つ持つこと自体 誓約と寿命 盗むための4つの条件

上の2行はそろっていない。ヒソカは見た目どおり2つ、クロロは何十個に見えても1つ。クラピカにいたっては、数え方そのものが決まっていない。

下の2行が、この記事の中心になります。

差1: 増やし方は「作る」「分ける」「奪う」で分かれた

同じ「増えている」でも、増やす動作は3人とも違う。

ヒソカは自分で作りました。伸縮自在の愛(バンジーガム)と薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)。どちらも大がかりな具現化物を出すタイプではない。ヒソカ本人は変化系で、伸縮自在の愛も変化系の能力です。

薄っぺらな嘘のほうは系統が明言されていません。やっているのは、オーラの質感を変えて薄いものの表面を覆うこと。触られれば偽物だと分かる程度の、軽い作りです(→ ヒソカの念能力は、なぜ”安く強い”のか)。

クラピカは1つの具現化物に働きを分けました。右手に出る鎖は5本。

  • 癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)
  • 奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)
  • 束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)
  • 導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)
  • 律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)

出しているものは鎖ひとつで、指ごとに役目が違う。新しく能力を作り足したのとは形が違います。

クロロは他人から奪いました。盗賊の極意(スキルハンター)は、相手の念能力を本に収めて使う能力。奪われた側はその能力を使えなくなる。借りるのではなく、取り上げる形になる。

作る・分ける・奪う。この3つは、次に見る「払っているもの」とそのまま対応していました。

差2: 払っているものは、容量・寿命・段取りに分かれた

増やし方が違えば、差し出すものも違ってくる。

ヒソカが払っているのは容量です。2つ持てば、1つあたりに回せるぶんは減る。だからヒソカの能力はどちらも単純です。

ガムのように伸びて貼りつく。見た目を書き換える。それだけ。

六性図では、得意な系統から離れるほど習得率が落ちます(→ 念能力の六系統とは?水見式・六性図でわかる主要キャラの系統)。ヒソカ本人が変化系で、伸縮自在の愛も変化系。得意な系統の近くで作ったぶん、容量を分けた損は小さく収まっています。

天空闘技場でカストロに向けた「キミの敗因は容量(メモリ)のムダ使い」という言葉。あれはそのまま、ヒソカ自身への戒めでもありました。

クラピカが払っているのは容量ではありません。中指の鎖には「幻影旅団以外に使えば自分が死ぬ」という誓約がかかっている。使う相手を絞る代わりに、絶対的な拘束力を得た(→ クラピカの念能力は”二段構え”)。

絶対時間(エンペラータイム)はさらに重い。全系統を100%引き出せる代わりに、1秒ごとに1時間の寿命が減ります。容量の上限を、寿命と引き換えに一時的に無視している。

クロロが払っているのは段取りと時間です。能力を盗むには、4つの条件を満たす必要がある。

  • 相手の念能力を実際に目で見る
  • 念について質問し、答えてもらう
  • 本の表紙の手形と相手の手のひらを合わせる
  • ここまでを1時間以内に済ませる

戦いの最中に全部そろえるのは、ほぼ無理な手順でしょう。しかも盗んだ能力は、持ち主が死ぬと本から消える。使うときは本を具現化して手に持つのが基本で、その間は片手がふさがる。

ヒソカ戦で見せた栞のテーマ(ダブルフェイス)は、盗賊の極意に後から加わった機能。この弱点を埋めています。

容量を増やさずに数だけ増やすなら、増やす手続きのほうを重くする。クロロはそういう作りになっています。

クラピカだけは、発をいくつと数えるかが決まっていない

3人のうち、ひとりだけ数え方が定まりません。

作中には、クラピカの発をいくつと数えるかの説明がない。出している具現化物は鎖ひとつなので、指ごとに働きを分けただけとも読める。一方でファンの間では、鎖の5つに絶対時間を足して6つと数えるのが一般的。

数える側に寄る材料もある。ヨークシン編で人差し指が空いていたのは、師のイズナビから「一つは残しておけ」と言われていたから。イズナビはそのとき、鎖の構想を「様々な能力を指ごとに使い分ける」と呼んでいます。空き枠という言い方が出てくる時点で、数える感覚そのものは作中にある。

その枠が発の数なのか、容量の余りなのかまでは書かれていません。俺は具現化物が1つである以上、鎖全体で1つと読むほうが自然だと考えています。ただし、断定できるところではない。

はっきりしているのは、数え方が割れても困らない作りになっている点です。クラピカの強さを説明するのに、発が1つか6つかは要らない。要るのは、誓約と寿命でどこまでの代償を払ったかのほうでした。

なぜ3人の増やし方は、これほど違ったのか

同じ基準で比べると、「複数持てるのか」という問いの立て方がずれていたと分かります。

3人が動かしたのは、それぞれ別の部分でした。ヒソカは発の数、クラピカは代償の重さ、クロロは手続きの重さ。

容量そのものを広げたままにできた者は、この3人にいない。クラピカの絶対時間だけが例外。ただしあれも、寿命と引き換えの一時的なものです。

だから発の上限が書かれていないのは、書き漏らしではないと思います。数を決めてしまえば、キャラごとに違う工夫が全部同じ形に潰れる。上限を数で置かず、容量という曖昧な形にした。だから作る・分ける・奪うの3通りが、同じ世界に並びました。

俺はここが冨樫のうまいところだと考えています。ルールを厳しく書かないほうが、キャラの設計に幅が出る。縛るほど強くなるという後づけの仕組みも、同じ考え方から来ている(→ 制約と誓約は”念の交換レート”)。

まとめ|念能力の数は、増やし方を見ないと決まらない

  • 発の上限を作中が言い切っている場面は見当たらない。数の代わりに置かれているのは、ヒソカが口にした容量(メモリ)という考え方
  • 読者から見た技の数と発の数が一致するのはヒソカだけ。2つとも大がかりな具現化物を出さない軽い作りで、容量を分けた損を抑えている
  • クラピカは、発をいくつと数えるかが決まっていない。具現化物は鎖ひとつだが、イズナビの助言のように、枠として数える描写もある
  • クロロは他人から奪う形で数を増やし、そのぶん4つの条件という重い手続きを負っている
  • 3人が動かしたのは発の数・代償の重さ・手続きの重さで、容量そのものを広げた者はいない

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